【食文化】危険な日本食を許すな!“トンデモ”よりも衛生面重視 外国人料理人の腕前の認定制度開始

知名度が高まり、海外でも多くの人の胃袋を満たすようになった「日本食」。
世界各地で店舗が増加する中、日本食に関する基本的な知識が広がっていないことに関係者は頭を悩ませている。
すしや刺し身などは衛生的な問題も懸念され、トラブルが起こればこれまで築いてきた日本食に対する評価が崩れてしまう。
世界で正しく安全な日本食が提供されるにはどうしたらいいか。さまざまな模索が続いている。(木下慧人)

■生魚を暖かいところで保管

東京・日本橋の日本料理「日本橋ゆかり」。昭和10年創業の老舗の厨房(ちゅうぼう)に立つのはオーストリア出身のペトラ・ヒーブラーさん(36)だ。
スペインのすし店で勤務していたが、より本格的に日本料理を学ぼうと昨年6月に来日。
店の三代目、野永喜三夫さん(44)から魚をおろす際の包丁の使い方や刺し身の盛りつけ法など、多くのことを学んだ。
「帰国後はこの知識を生かして働きたい」と話す。

だが、このように日本に訪れて基礎から学ぶ外国人はごくわずかだ。

農水省によると、平成18年に約2・4万店だった海外の日本食店は25年に約5・5万店、27年には約8・9万店と右肩上がりに増加している。

これらの中には必要な技術を習得しないまま「日本料理」と銘打った料理を提供する店も少なくない。
「米国では湯葉をカラフルに着色し、巻いたすしが人気」と野永さん。
ただ、日本人に違和感があっても現地で受け入れられている場合もあり、是非についての評価は難しいという。

一方、日本食の保護や継承などを進めている農水省が、味や見た目の問題以上に懸念しているのは「衛生面」だという。

海外50カ国以上ですしの指導をしている一般社団法人「国際すし知識認証協会」の風戸正義代表理事
「海外にはインターネットですしの動画を見ただけで、店に出すようなところもある」と指摘。
生魚を暖かいところで保管するなど、不適切な扱いをしているケースもあるという。

自身もポルトガルで行ったセミナーで生魚が原因と思われる食中毒にかかった。
「生魚を料理で扱う文化がある国ばかりではない。食中毒や寄生虫が発生すると日本食全体のイメージダウンにもつながる」と警鐘を鳴らす。

■過去には誤解で“炎上”

現状に危機感を抱いた農水省は昨年、外国人向けに正しい日本食を調理できる技能を認定する制度を立ち上げた。
外国人料理人の腕前を農水省ガイドラインに沿って民間団体が認定。
衛生管理はもちろん、「日本の食文化」「技能」などが問われ、正しい知識を学ぶことで「海外への日本産食材の輸出にもつながれば」(農水省関係者)と相乗効果も狙う。

課題もある。農水省は「平成30年度までに認定者を1千人以上」を目標としているが、今年度に認定を受けた、もしくは受ける見込みの料理人はわずか約30人にとどまる。

農水省は18年にも、海外にある日本食レストランの認証制度を検討したことがあったが「政府がやることへの反発があった」(同省関係者)。
海外メディアなどからも「スシポリスを派遣するのか」などと猛批判を浴びて立ち消えになった。
そうした誤解が生まれないよう、今回は運営を民間に委託するなどの方策をとったが、どこまで制度が浸透するかは未知数だ。

農水省関係者は「PRは今後の課題」と認知度の低さを認め、「食中毒などが起こってからでは遅い。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170216-00000530-san-soci
産経新聞 2/17(金) 9:45配信
今後、制度をさらに拡大し、世界に安全な日本食を広めたい」と話している。