【国際】「世界で最も迫害された民族」の悲しい現実…「ロヒンギャ」を救うにはASEANの力が必要だ!

バングラデシュの難民キャンプにある診療所で健康診断を受けるロヒンギャの難民たち。2月5日撮影
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ミャンマー西部に住むイスラム教徒の少数民族ロヒンギャの窮状に拍車がかかっている。
2016年10月にはミャンマー軍が行った攻撃で130人のロヒンギャが殺され、数十の建物が焼け落ちた。
こうした事態で同国政府やノーベル平和賞受賞者アウンサンスーチー氏らの評判は損なわれる可能性がある。

ミャンマー軍指導者は攻撃について、同国の都市マウンドーで起きた警察官殺害事件の犯人を探し出すことが目的だったと主張。
しかし国際人権組織ヒューマン・ライツ・ウォッチが衛星画像を分析したところ、同攻撃以降、さらに多くのロヒンギャの村が破壊されていたと報告されている。

■世界で最も迫害された民族

居住地を追われたロヒンギャの人民は3万人にも達するとみられている。国連ロヒンギャを、世界で最も迫害された少数民族だと見なしている。

危機はバングラデシュ、タイ、インドネシアといった周辺諸国にも飛び火。今や批判の矛先はASEAN東南アジア諸国連合)に向かっている。
ASEANロヒンギャ問題への取り組みに及び腰で、紛争が民族や宗教によって東南アジア地域を分断させる可能性があることへの認識が足りないというのだ。

東南アジアの宗教別人口構成はイスラム教徒が60%、仏教徒が18%、キリスト教徒が17%である。
ロヒンギャの亡命を受け入れている国では、すでに根強い差別が広がっている。

ロヒンギャは受け入れ国に到着後、治安部隊との激しい戦いや食糧不足にさらされ、テロ組織の人員獲得源となっているのだ。

イスラム過激派組織は、ミャンマー当局へのジハード(聖戦)を呼びかける映像を投稿。
インドネシア当局は最近、ジャカルタミャンマー大使館への攻撃を計画したとして2人を逮捕した。

過激派組織が今後もロヒンギャを同情や新たな構成員、資金を得るための道具として利用することは間違いない。

ASEAN首脳はこうした過激派の活動を防ぎ、ロヒンギャの生活を守る必要がある。
加盟国が互いに干渉しない「ASEAN方式」はこれまで域内経済発展に貢献したが、今やこうした「見ざる聞かざる」戦略は通用しなくなっている。

マレーシアはこの点を認識している。最近のASEAN外相会合で同国は人道援助のための調整とロヒンギャへの残虐行為の調査を求めた。
会合後にミャンマーは、人道的なアクセスを認め、ASEAN加盟国に情報を提供する意思を表明した。

人間開発指数が高いシンガポールやマレーシアなどの成熟した民主主義国が責任あるグローバルリーダーとして人道的な問題解決能力を拡充できるよう、ASEANは行動様式を転換するべきだ。

ASEANは、強力で政治的な責任があるEU(欧州連合)型の共同体に成長する必要がある。
そのためには、地域の人道上の危機を緩和するため、平和的かつ効果的な方法を探らなければならない。

■公平な調停役になるためには

非公式の推計によると、ロヒンギャ難民はバングラデシュだけですでに50万人いる。そして最近の軍事介入によって、さらに2万人が流入した。
1億7000万人の国民に対する基本サービスの提供だけでも手一杯なバングラデシュ政府にとって、これは頭の痛い問題だ。

すでに、ミャンマーの外務次官がダッカを訪問して交渉を行っている。
また、ラカイン州問題に関するミャンマーの諮問委員会のメンバー3人が、同州に隣接するバングラデシュの海岸地域にあるスラムを訪れた。

次はASEANの番だ。
シンガポールなどの加盟国はミャンマーバングラデシュの双方と友好関係にあるため、この両国が数十年にわたる問題に終止符を打つ基盤を提供できる。

ASEANは政治的な役割を十分に果たし、長期的な解決をもたらす方針を定めなければならない。
そうすれば、ミャンマーバングラデシュ、そして長い間迫害されてきたロヒンギャという三者間の、公平な調停役を果たすことができるだろう。

イード・ムニール・カスル(国際シンクタンクIPAG所長)

http://toyokeizai.net/articles/-/157866