【大阪】飛田会館事務員「皆さんにお参りしてほしい」 西成区山王「三つの龍神」 池の大蛇が「主」に…戦災免れ信仰集める[02/17]

阿倍野区との境界ぎりぎりにある天龍大神=大阪市西成区山王2で、松井宏員撮影
http://cdn.mainichi.jp/vol1/2017/02/16/20170216oog00m010095000p/9.jpg
龍大神には新しい花が供えられていた=大阪市西成区山王2で、松井宏員撮影
http://cdn.mainichi.jp/vol1/2017/02/16/20170216oog00m010097000p/9.jpg
ほこらの傍らに建つ「かみやまとばし」の柱=大阪市西成区山王2で、松井宏員撮影
http://cdn.mainichi.jp/vol1/2017/02/16/20170216oog00m010098000p/9.jpg
飛田会館の前庭に鎮座する白龍大明神=大阪市西成区山王3で、松井宏員撮影
http://cdn.mainichi.jp/vol1/2017/02/16/20170216oog00m010096000p/9.jpg
旭通りの標柱(環状線天王寺
http://cdn.mainichi.jp/vol1/2017/02/16/20170216oog00m010099000p/9.jpg

 ◆環状線天王寺

 寒波のさなか、大阪案内人の西俣稔さんはJR天王寺駅から西へと歩く。
大阪市立大付属病院の西の路地に入る。この路地は阿倍野区西成区の境界だ。
途中の急な坂を下ると西成区山王1。そこに朱塗りの鳥居を持つほこらがある。

 保存会の手になる「黒龍大神の由来について」と題した説明によると、
明治末ごろまでこのあたりに大きな池があり、大蛇がすみついて住民から「池の主」とあがめられていたという。
そこで池の周りに黒龍、白龍、天龍の三つのほこらを建て、その信仰のおかげで山王町は戦災にあうこともなく、大きな災いがないとか。
ほこらには新しい花が供えられていた。月例祭も行われているようで、今に至るまで信仰を集めている様子がうかがえる。

 ほこらの傍らに「かみやまとばし」と刻まれた橋の親柱と思われる高さ1メートルほどの石柱がある。
説明には「池から流れる小川に架橋されていた」とある。
が、西俣さんは「小川にこんな大きな親柱を持つ橋が架かってたやろか」と首をかしげる
東横堀川の上大和橋のではないかと私は思う」。
ここから約4キロ北、東横堀川道頓堀川が直角に交わるあたりに今も架かっているのが上大和橋。
だとしたら、なんでこんな所に親柱が? 「それはわかりません」

 駅の方へと戻り、あべのルシアスとあべのアポロが並ぶ南側の緩い上り坂を進むと、歩道脇に「旭通」と刻まれた標柱が建つ。
片面には「阿さひ通」とある。「角川日本地名大辞典」によると、これは「旧村道の通称名」。
原野、畑地だった一帯は1889(明治22)年、天王寺駅ができてからその様相を変え、宅地や繁華街が次々にできていった。
今に続く旭町の町名は1929(昭和4)年、村道の通称名を基に付けられた。

 西俣さんの解説。「このあたりは上町台地で、西の低地からは朝日が輝いて昇る様子が見えた。
縁起のいい名前を付けたんです」。付け足して「旭区も大阪市の東にあって、日が昇るから」。
地名辞典の「旭町」のページには、朝日や旭の付く府内各地の地名が並ぶ。

 旭通は、今はあべの筋と1本西の通りの約200メートルを結ぶだけだが、昔はさらに南西へ延びていた。
そのあたりの地図を眺めていて、天龍大神を見付けた。これも阿倍野区との境界ぎりぎりの西成区山王2にある。
鳥居の奥に社があり、地元の方たちが世話しておられるようだ。

 もう一つの白龍大明神は、すぐ近くの新開筋商店街を左に入った飛田会館の前庭に鎮座していた。
お社はまだ新しく、「飛田新地 協同組合 料理組合 平成十九年」とある。
会館の事務員さんに伺うと、元は会館の屋上にあったが、誰もお参りしないし、だいぶ古かったので、
「皆さんにお参りしてほしい」と社を新しくして下におろしたのだそうだ。

 このあたりは飛田新地。かつての旭通は飛田へと通じていたのだ。
これについては次回に触れるが、三つの社を見付けたところで、気になるのは“大きな池”だ。
今はネットで昔の地図を見ることができる。
1908(明治41)年と21(大正10)年の地図を見ると、今の金塚小学校のあたりに逆V字型の池がある。
そんなに大きな感じはしないが、黒龍はちょっと離れているものの、天龍、白龍には近い。
阿倍野区史」を繰ると、約8000平方メートルの稲屋池がこの池にあたりそうだ。
金塚小学校に尋ねると、確かに23(大正12)年に稲屋池を埋め立てて学校が建てられたそうだ。
これが龍神のおわした池だろうか。【松井宏員】

http://mainichi.jp/articles/20170216/ddl/k27/070/419000c