【原野】1万坪が10万円で取引…山林を買う人が急増中

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/020900110/021500005/
 本特集では様々な商品の値付けの妙に迫ってきたが、世の中には価格設定の根拠が一般人からは分かりにくいものがある。その1つが山林の価格だろう。
 そこで、山林売買を専門とする「山林バンク」の代表、辰己昌樹氏に山林売買の相場や購入者たちの実態について聞いた。

 まず、気になるのはどんな人たちが山林を買うのかだ。辰己氏によるとメーンは杉、ヒノキの植林や伐採を目的とした
林業を営む業者だ。「新たに林業へ新規参入するために異業種の企業などが購入するケースも増えている」という。そのほかでは、
アウトドアを楽しむためや医療施設を作るといった目的で購入するケースもある。また、「田舎暮らしを目的として、都会に住む人が購入する場合も増えている」(同氏)。

価格はピークの10分の1
 肝心の山林の価格だが、取引事例が少なくケース・バイ・ケースにならざるを得ない。それでもあえて目安を示すなら
「1ha(約3000坪)で30万円~80万円」(辰己氏)。ただし、杉、ヒノキなどが植林されている場合だ。人工>自然とは一般人から考えると意外だが、
植林ではなく天然林の山林の方が価格は下がって「1haで20万円~30万円」が目安となると辰己氏は話す。
1万坪が10万円で売買されたこともあるそうだ。山林の価値は植林された樹木の将来の売却価値に左右されていることが特徴だ。

 かつては地方の富裕層にとって山林は投資先の1つだったが、山林価格のピークは1979年~1980年で当時は今の10倍の価格で取り引きされていた。
ピークから10分の1と大幅に価格が下がったことで、通常の不動産とは異なり、今では好不況の波にもあまり影響を受けなくなり価格が安定しているという。

 山林売買の注意点は、1万坪以上といった大規模な山林売買に事前届け出制を導入する県も増えていること。
山林の取得後は市町村に届け出る義務もある。また国からもアンケート調査の用紙が届くので、それに答えることも必要だ。
 一時期、海外投資家が日本の水資源を狙って、山林を買いあさっているという報道も見られたが、その心配はないようだ。
林野庁の調査では海外資本と思われる「森林買収の事例」は2006年~2015年までの10年で合計108件・1232haに過ぎない。
「ある程度の規模以上の山には大抵、源流となる小川があり、山林の価格を評価する場合に源流が評価されることはない」(辰己氏)と話す。
 最近では山林所有者の高齢化などもあり、空き家ならぬ「放置林」が問題になっている。日本の自然を守るという意味でも、
山林の所有に興味を持ってくれる人が増えてくれればと辰己氏は願っている