【国際】米中合作映画に「文化の壁」 言語・観客の好み・規制…課題山積[2/18]

 マット・デイモン主演の米中合作映画「グレートウォール」の公開が17日、全米で始まった。初の米中共同製作の大型作品となるこの映画は、二大市場でファンを獲得するための重要な取り組みとなる一方、両国間の文化の違いを埋める試みは難航する可能性がある。

 近年急成長した中国の映画業界は米国映画の興行収入独占に対抗しているが、世界的ヒット作品の量産化への取り組みはまだ始まったばかりだ。

 ボックスオフィスプロ・ドット・コムのアナリスト、ショーン・ロビンス氏は、公開直後となるプレジデンツデー(20日)の連休中の同作品の米国興行収入は1750万ドル(約19億8985万円)、累計興行収入は4000万ドルにとどまると予想する。

 中国のチャン・イーモウ張芸謀)監督を起用したこの作品には、中国の不動産大手、大連万達集団(ワンダ・グループ)傘下のハリウッド映画会社レジェンダリー・エンターテイメントの子会社や米ケーブルテレビ大手コムキャスト傘下のユニバーサル・ピクチャーズが出資している。

 ロビンス氏は、「総製作費1億5000万ドルの元を取るには、映画館の分け前と数百万ドルの映画宣伝費を考慮しても、4億ドルの興行収入が必要」と試算する。これまでの興収は中国を中心に約2億2450万ドルを回収している。

 米ハリウッドの映画会社は、フィルムファイナンスによる資金調達やマーケティング、そして最近では共同製作など、あらゆる分野で中国のメディア企業と提携している。

 中国国営メディアによれば、中国政府は昨年、過去最多となる89の共同製作映画を承認した。このうち10作品は米映画会社との合作映画だ。ワンダ・グループは世界最大と自負する映画スタジオを中国国内に建設中で、合作映画事業は今後も増える見通しだ。

 「グレートウォール」の米国での公開時期はくしくも国内の映画需要の減速のタイミングと重なった。さらに、同時期の公開作品との厳しい競争に直面することになる。

 米映画情報サイト「ロッテン・トマト」では、否定的な反応が大勢を占めた。米映画誌ハリウッド・レポーターのクラレンス・ツイ氏は「中国と米国の映画業界にとっては画期的な作品だが、作品にとっては成功とは言い難い」と指摘する。

 米中の市場での成功を目指す両国の映画会社にとって、言語の違いや世界的に有名な中国人俳優が少ないことなど、課題は多い。中国との共同製作に関わる複雑な規制に対応する必要もある。

 中国の映画会社、楽視影業の張昭・最高経営責任者(CEO)は、「米中の映画会社は両国の観客の好みを理解することが必要だ。われわれは時間をかけて共同製作の手法を見いだすことができるだろう」との見通しを示した。(ブルームバーグ Jeanne Yang)

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170218/mcb1702180500002-n1.htm
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170218/mcb1702180500002-n2.htm

http://www.sankeibiz.jp/images/news/170218/mcb1702180500002-l1.jpg
15日、ロサンゼルスで開かれた「グレートウォール」のプレミア試写会に出席したチャン・イーモウ監督(左から2人目)と出演者(AP)