【フィリピン】ドゥテルテ大統領「麻薬対策部門を一つ残らず解散することを命じる」警察の韓国人ビジネスマン誘拐・殺害に激怒

[マニラ 13日 ロイター] - フィリピンのドゥテルテ大統領が先月29日、治安部門のトップを緊急会議に招集したとき、彼の心はすでに決まっていた。それは軍や警察の幹部がまったく予期しない事態だった。
昨年6月に就任した大統領の看板政策ともいえる情け容赦のない麻薬撲滅戦争において、警察を主役の座から外すというのだ。この急転換の理由は1つしかない、と緊急会議に出席した3人の関係者はロイターに語った。
そのときドゥテルテ大統領は激怒していた。麻薬犯罪捜査部門の警察官が、韓国人ビジネスマンを誘拐し殺害。それも、こともあろうに、ケソンのフィリピン国家警察の本部内で絞殺していたというのだ。
「大統領は単刀直入にこう言った。麻薬対策部門を一つ残らず解散することを命じる、と」。大統領府での会合に出席していたロレンザーナ国防相はそう語った。
そして、警察よりもはるかに規模の小さいフィリピン麻薬取締庁(PDEA)が、軍の支援を得つつ、麻薬取締業務を引き継ぐことを大統領は決定した。
これはドゥテルテ大統領による驚くべき転換と言えるだろう。
警察官らが超法規的な殺人を犯し、殺し屋と共謀しているという告発が何カ月にもわたって続くなか、同大統領は一貫して警察を支持していた。この「麻薬戦争」による死者は7カ月で7600人以上に達しており、多くは麻薬の密売人や常習者とされている。
乱暴な物言いで知られるドゥテルテ大統領は、麻薬戦争の行き過ぎを戒める国連や米国、欧州連合からの呼び掛けを繰り返し無視したうえで、「愚か者」呼ばわりや、侮蔑の言葉で応じてきた。
大統領の気まぐれなスタイルに慣れている側近たちも、1人の外国人の死が、わが道を行く大統領の歯止めとなったことに意表を突かれた。
説明として考えられるのは、フィリピンにとって韓国との関係が、開発援助や観光、海外雇用、武器供与の点で、きわめて重要であるという点である。
だが治安当局者によれば、大統領の決断のきっかけは、韓国人ビジネスマンJee Ick-joo氏の殺害、そして「麻薬戦争」を口実とした誘拐・身代金要求という手口があまりにも大胆だったからだという。
「あの韓国人の事件がすべてだ。この事件が起きたこと自体が、大統領を怒らせた」とロレンザーナ国防相はロイターに語った。

PDEAのディレクターとしてやはり緊急会議に出席していたイシドロ・ラペナ氏も、この展開は予想していなかった。
大統領はこの場で警察を厳しく批判し、麻薬取締部門の活動停止と粛清は、今や麻薬戦争そのものと同程度に重要だと告げた、とラペナ氏はロイターに語った。
ロナルド・デラロサ国家警察長官は、ドゥテルテ大統領が今回の事件に「本当に怒り狂って」おり、緊急会議の後に、「(警察は)芯まで腐っている」と大統領が公言したことを明らかにした。

<火を見るより明らか>

大統領の法律顧問を務めるサルバドール・パネロ氏は、検察官出身の大統領が、厳密に法律の文言に従って決定を行っていると語る。
人権団体が告発している「即決の処刑」を裏付ける証拠はないとしつつも、ドゥテルテ大統領にとって、Jee氏の殺害は反論の余地がなく、大胆不敵で厄介だと同氏は語った。「こうした犯罪が行われたことは火を見るより明らかだ」とパネロ氏は言う。

この事件によって韓国におけるフィリピンのイメージが悪化することを懸念した大統領は、パネロ氏をソウルに派遣して、大統領代行を務める黄教安首相に謝罪した。

韓国政府はフィリピン政府に対する最大の軍備品供与元であり、戦闘機や巡視船、フリゲート艦、軍用トラックを供与・売却している。


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http://jp.reuters.com/article/philippines-drugs-southkorea-idJPKBN15V054?sp=true