【米国】アメリカでイスラム教徒への感情改善、大統領選が影響か…この2年間で「冷めている」から「中立」に改善

米国在住のイスラム圏出身者を支援する集会でプラカードを掲げる女性(3日、ニューヨーク)
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 米大統領選ではイスラム教徒の欧米社会での立場を巡る激しい議論の応酬があったが、米国人の間ではイスラム教徒に対する見方が変化し、数年前より好感度がやや改善したことが分かった。

 米世論調査機関のピュー・リサーチ・センターが15日発表した調査によると、イスラム教徒に対する気持ちの「温度」を0(最も冷たい)~100(最も温かい)の段階で答えてもらったところ、米国人は平均で48と評価した。2014年の「冷めている」から「中立」に8ポイント上昇した。

 2014年同様、ユダヤ教徒カトリック教徒に対して最も好意的だったが、全ての宗教の信者に対する米国人の感情は改善した。イスラム教徒と無神論者の最下位は変わらないものの、ヒンズー教徒とともに過去2年間の伸びが最大だった。

 民主党支持者とイスラム教徒の知り合いがいる人々が特に好意的だった。ピュー・リサーチによると、イスラム教徒は米国の人口の約1%を占めるという。

 若者はイスラム教徒に対する気持ちを平均58でと評価。キリスト教福音派や米国の主流であるプロテスタントとほぼ同程度だった。

 イスラム教徒に対する見方は人口動態上の各層で改善している。

 調査を担当した上席研究員のジェシカ・マルティネス氏は「さまざまな宗教グループ、民主党支持者、共和党支持者など幅広い層でイスラム教徒への感情が改善した」と話す。「イスラム教徒がニュースに頻繁に登場して日常の話題になることが多く、否定的な扱いもあるが、好ましい面も意識された。そして自分の周囲にいるかもしれないイスラム教徒への関心が高まったという見方ができる」

 イスラム教徒への憎悪犯罪ヘイトクライム)が急増する半面、米国人がイスラム教徒への共感を高めていることを示す調査結果も相次いでいる。

 メリーランド大学米大統領選の選挙期間に4回実施した調査では、米国人のイスラム教徒に対する見方が着実に改善したという。これについて同大学のシブリ-・テルハミ教授は、選挙戦での差別を助長する言葉遣いが、皮肉にもイスラム教徒への人々の見方を好転させたと考える。「逆説的だが、トランプ氏がイスラム教徒を選挙戦の中心テーマに据えたことで、それに反対する人々が結束してイスラム教徒を応援する側に回った」

 ホワイトハウスはコメントの求めに応じなかった。

執筆者:Ian Lovett

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