【サッカー】アルビ、アジアの夢 シンガポールで4冠の快挙

シンガポールのプロサッカー「Sリーグ」に日本人選手だけで参戦しているアルビレックス新潟シンガポール(新潟S)が昨季、リーグ戦初優勝を含め、カップ戦など国内タイトル全4冠に輝いた。1996年のSリーグ開幕以来初となる偉業。クラブを経営する是永大輔社長(39)は「去年は狙っていた。シンガポールと日本の国交50周年で注目されていたのでほっとした」と笑顔で振り返る。

 新潟Sは海外チーム参入でレベルアップを図ったシンガポールサッカー協会の呼びかけに応じ、J1新潟が下部組織として2004年に設立した。Jリーグのアジア戦略なども本格化しておらず前例のない時代。若手育成の場として期待されたが成績、経営ともに苦戦が続いた。

 撤退も検討されていた08年、会員制サッカーサイト編集長から転身したのが是永社長だった。「何のためのクラブなのか分からない状態」から営業努力で収入を増やし、コストを削減。新潟からの数千万円という援助に頼るのもやめ、独立採算に踏み切った。クラブハウスでのミニカジノ営業など多角化経営に着手して黒字化に成功し、売り上げは就任前の約10倍にまで伸びた。

 経営が安定すると選手の質も上がり、成績も上向いた。11年にリーグカップで初優勝。昨季はリーグ戦でも悲願の頂点に立った。昨季公式戦20得点で年間最優秀選手に輝いたFW河田篤秀(24)は阪南大卒業後2年間のプレーで力が認められ、今季からJ1新潟に加入した。日本だけでなく、タイ、インドネシア、マレーシア、ドイツ、デンマークエストニア--。約60人の選手がこのクラブを経て海外に羽ばたいている。サッカーという「ツール」を通して、世界に飛び出していく日本人を生み出すのもクラブの重要な理念だ。

 タイトル全制覇という結果を出したが、「これがゴールではない」。さらに将来的にはシンガポールに根付く「ローカルチーム化」も目指す方向の一つという。Sリーグ優勝クラブにはアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフ出場権があるが「外国人チーム」として特例で参戦している新潟Sの出場は認められていない。シンガポール代表を育てるなどの夢も残っている。是永社長は「ACLにはぜひ出たい。次のステップとしてローカルチームも考えていきたい」と見据える。【大島祥平】

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