【サッカー】高校選抜はなぜJ選抜を圧倒できたのか?知られざる舞台裏の“変革”に迫る

直近の4試合に限定すれば「3勝1分け」!

[NEXT GENERATION MATCH U-18]日本高校選抜4-0 U-18 Jリーグ選抜/2017年2月18日/日産スタジアム
 
 日本高校サッカー選抜とU-18 Jリーグ選抜が対戦する『NEXT GENERATION MATCH』。8回目を迎える2017年の一戦は、高校選抜が4-0でJ選抜を破るという大差の結末を迎えた。

 これで通算対戦成績でも3勝2分け2敗で高校選抜が勝ち越し。過去8大会のうち、直近4試合の結果に限れば、3勝1分けで高校選抜が大きく上回っている。なぜ、これほど差がつくようになったのだろうか。
 
 初期の大会は結果・内容ともにJ選抜が上回ることが多かったのだが、これは高校選抜側の体制の問題が大きかった。高校1、2年生で構成されるJ選抜に対して、高校選抜は直近の全国高校サッカー選手権で優秀選手に選ばれた選手たちで構成されていたため、自然と3年生が中心になる。
 
 ところが、Jリーグに進む選手はクラブ側の許可が下りなかったり、本人が初めて飛び込むプロの世界に集中したい想いもあって、参加を辞退するケースが多く、出場メンバーのほとんどが大学に進学する選手たちとなっていた。
 
 彼らは選手権終了後から実戦を離れ、選手によっては練習からも遠ざかってしまう(特に地方の高校から関東・関西の大学に進む予定の選手に顕著な傾向だった)。このため、いざ選抜チームとして集合したとき、ベスト体重を大幅に超過している選手がいたり、実戦感覚がまるでなくなっている選手も珍しくなかった。
 
 もともと高校選抜は3月末から4月初旬に行なわれる、欧州の国際ユース大会に出場するためのチームだ。言ってみればコンディションはその時期までに整えば、問題はない。ただ、この大会が始まると、年下のJ選抜に苦杯を舐める試合が相次いだ。高体連サイドにも当然意地がある。『NEXT GENERATION MATCH』も意識しながらの強化策が採られるようになったのだ。
 
 ひとつは、進学する選手たちに対する個別的な働きかけで、学校の協力も得ながらトレーニングの環境を整えて、なんとかコンディションの維持に努めた。大会自体の認知度が上がり、選手側もこの試合に備える意識が芽生えてきたという側面もあるだろう。
 
 さらに今回のチームで言えば、青森山田高の黒田剛監督が指揮官だったことから(選抜監督は持ち回りの起用なので、優勝監督が起用されたというわけではなく、今回は単なる偶然である)、主力である青森山田高の選手たちが当然のようにしっかり体調を整えてきたのも大きかった。同時にコンディションの良い下級生を多く起用したのも変化した部分で、この試合のメンバー18人中、実に6人が2年生だった。

また、選手権の大会優秀選手に限定されていた選手選考についても変革があった。現在は夏のインターハイで活躍した選手を中心に別枠でのピックアップが行なわれており、予選敗退校のなかから、とりわけ有能な下級生をチームに加えるようになっているのも大きい(予選敗退校から選ぶ試み自体は以前からあり、年度によってやり方が異なる)。より幅広く、様々なチームの選手にチャンスを与え、将来性のあるタレントに欧州遠征を含めた経験を積んでもらおうという意図だが、単純に高校選抜の戦力アップという面でも小さからぬ意味があった。
 
 今回のチームにも、先制点を叩き込んだFW町野修斗履正社高/2年)や3点目をアシストしたMF松本泰志(昌平高/3年→サンフレッチェ広島)といった、選手権では惜しくも府県予選で涙を呑んだ選手たちが参戦。高校選抜の底上げが実現している。
 
 こうした変化を踏まえ、かつては選手権で活躍した選手たちに与える“ご褒美”のイメージが強かった高校選抜チームでは、より“勝負”や“チーム”を意識したシビアな選考が行なわれているのだ。
 
 黒田監督は常々、Jクラブと切磋琢磨する意義を強調してきたが、高校選抜というJリーグ開幕以前から続く枠組みもまた、Jとの戦いを通じてブラッシュアップされた一面がある。
 
 4-0というスコアだけを抽出しても大した意味はないのだが、高校選抜の仕組みや意識自体が着実に変化し、両者の力関係に変化が生まれてきているのも確かである。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170218-00022634-sdigestw-socc&p=2